「亜紀」
彼との対峙は、
思っていたよりもずっと早く訪れた。
「隆史」
名前を呼ぶことも、
こんなにすんなりできる。
会長ならきっとそうはいかない。
誰かが言った。
穏やかな恋もあるって。
毎日ドキドキするのより、
そっちの方が良いって。
「…俺は、亜紀が好きだよ。やっぱり」
でもね。思うの。
ドキドキする恋に。
本当に好きな人に
出会ってしまったら、もうダメなんじゃないかって。
「…タカシ、あのね、私……」
「待って。おれに言わせて。」
「亜紀、別れよう」
ぐさりと胸に刺さった何かは、
過去との決別には必要な痛み。
「好きだった、すげぇ。」