「なんだよ、急に」
笑うと見える八重歯。
女の子みたいな二重。
昔は泣き虫だったけど、
すっかり強いやつになってさ。
お母さんが死んだとき、
うじうじして外に出ようとしない私を
『亜紀、スケートしに行くぞ』
『イルミネーション見に行くぞ』
『お前、絶対バレンタイン作れよ』
なんて引っ張ってくれた隆史。
支えられた。
そんな彼に。
だから、
これからは私は支えなきゃ。
会長を支えたいって思ったのは、
あの気持ちは、もう忘れよう。
「気持ちわりぃな」
言葉とは裏腹に
彼の耳は真っ赤で。
それに笑えば
「なんだよ」
不機嫌にそう言ってから
私を後ろから抱きしめる。
ほら、キュンってした。
大丈夫、私は隆史のことちゃんと好きだよ。
彼のことは、
好きじゃないんだよ。
ほんとだよ。
『加藤』