「ねぇ、会長!あれって…」
電車から見えた景色に思わず声をあげ、そちらを向けば
「…。」
思ったより近い顔。
ばっちりと目が合ってしまって俯いた。
夏休み前、最後の学校の日。
突然会長が
デートに行こう、と言い出した。
屋上での一件以来、
会長のことを避けていた。
このままでは本当に
だめだと思ったから。
…一番大切にしなきゃいけない人が誰なのか、わからなくなると思ったから。
それなのに。
会長が言った、デート。
どうしよう、って思った。
分かる。
ダメだって、わかってたのに。
…そばに、居たかった。
最後の思い出でいい。
最後に、彼との思い出が欲しかった。
だから。
行先は前の街じゃ嫌で。
これからもずっと、
そこに行けば
彼を思い出すことが出来る場所が良かったんだ。