会長は、なんだそれって、笑ったけど。

私にとっては、たぶん、一生忘れられないことだったんだ。



あの瞬間を、たぶん一生。







「だけど。今日は夏を連れて来ました」

「ラムネ?」

「あたり」




季節をいつも連れてくる、なんて言ったら。

笑われると思った。
だって、タカシはそうだったから。



だけど、彼は。



「秋と冬、どうしようかなってさ。
なんか、ハードル上がるよ」



そう言ってほほ笑む。

笑ったり、しない。




やっぱり、違うんだ。
彼は、タカシとは、違う。









「会長やばいですよ!」


あの時、ラムネを振ったのは。
わざとあふれさせたのは。





こぼれた涙を。

心の中、芽生える醜い思いを。



会長が、気付かないように。