「本当にデリカシーないですね!」
「ははは、ごめんって。」
すっかり泣き止んだ加藤に花火を手渡す。
「…そっちがいい」
彼女なりの必死の悪態なのだろう。
渡した花火から別の花火に持ち替える。
尖らせた口をそのままに。
だけど目は嬉しそうに微笑んでいる。
「ほら、火つけるから出して」
「…ありがとうございます」
意地っ張り。
強がり。
負けず嫌い。
そのくせ素直。
可愛くて。
愛しくて。
大切で。
「わぁ!」
パチパチ弾ける花火。
加藤の笑顔が花火の光に照らされて浮かび上がる。
メイクがボロボロでも、
泣いた後で
目がはれてても。
それでもやっぱり加藤の笑顔は世界一可愛いと思う。
そんなこと、
俺は素直に言えないんだけど。
「…会長」
「ん?」
「…ありがとう」
最高の笑顔で、こんなことを言う君と違って。
俺は素直じゃないから。