「暗いのとかダメなの?」

「ちょっと苦手なだけです。
別にダメではないです。」


どこまでも強がりで。
そんなところが可愛くって、
やっぱり笑ってしまう。

「本当に全然大丈夫です!」

「じゃあ、そこまで一人で行ってみ」

少し先の木を指さし、笑えば
加藤はやっぱり唇を尖らせる。



「い、いいですよ」

いや、冗談だよ


と、言う前に加藤は駈け出してしまった。



近くに見えて、
割と遠くにあるその木。



途中、姿が見えなくなりそうで。
やけに焦ってしまって




「加藤!?」


急いで駆けよれば
「わ!」

「うわ!」


いたずらっ子みたいに笑った加藤が
途中の木の陰から出てきて。


「…びっくり、したぁ」

「へへへ」


良かった。
加藤、ちゃんと笑ってる。




「会長の方が怖がってるじゃん」

「うるせぇな」


下手くそな笑顔とかじゃなくて
ちゃんと、笑ってる。