いや、でも加藤はそんなことするやつじゃないよな。
じゃあ、何だ。
この着信履歴は。
「うお!」
真っ暗な道。
何とも恐ろしい声をあげてしまった。
どうしよう。
光る画面には
加藤亜紀
の、文字。
どうしよう。
…どうしよう。
と、思っていても心は素直だ。
「…もしもし」
押してしまった通話ボタン。
出てしまった電話。
すべては、加藤の声を聞きたいって、
ただその気持ちだけで。
『…もしもし』
どうしよう。
こんな時に、思い出してしまうなんて。
“亜紀”って呼ぶ声と
“タカシ”って呼ぶ笑顔。
誰だよ、タカシって。
ふざけんなよ、何だよ。
どういう字書くんだよ。