一樹というひとの家までは
さっきの駅から5分もかからなかった。


その間、僕は一樹というひとから
一定の距離を置いてついていった。


前に見える背中を見ながら
ずっとカズとの間違えを見つけていた。


あぁ、カズならこういう時
「ユウ!早く来いよ!」って
笑顔で呼んでくれるのに
この人は一回も振り向かない。

カズなら手をつないでくれるのに。

カズなら楽しそうに
サッカーの話をしてくれるのに。

カズなら僕と同じ服なのに。



カズなら…、カズなら…、


ひたすらその繰り返し。
馬鹿な僕の頭の中はカズでいっぱい。