「うぅ……。ぐぇえっ……」
横たわったヤンキーは、溝内をやられて呻き声を上げた。
だけど、辰巳くんは足を休めない。
「た…辰巳くん!!」
勢いで呼んじゃったけど、どうしよう。
「……何？」
帰ってくるのは、冷たい目線。
どうしよう。
聞きたいことは沢山在るのに。
「もう、いいんじゃない？その人苦しがってるよ？」
「……お前、こんな俺を見て、引かないのか？」
「…引いたりなんか、しないよ」
「……気持ち悪く無いのか？いつも、キャラ作ってたんだぞ？それに……、今だって……」
「止めてっ!!」
…なんでそんなに悲しそうな顔をするの？
そんな目をするの？
「…………あなたは、あなたじゃない…………」
「……そうか」
「……そうだよ」
一瞬、辰巳くんが笑った気がした。
「……ありがとな」
ん？
なんか、立場がちがうぞ？
「いやいや、私が辰巳くんにお礼言う立場だからっ!!助けてくれてありがとう」
何か、不思議。
あれだけ遠く感じてた人が今、こんなにも近くにいるんだ。
手を伸ばしたら届いちゃう。そんな距離。
