◇
はぁ~。
一人はやだなぁ~。
この年にもなって寂しすぎる。
どっか、寄り道してこっかなぁ~。
だけどここ、妙に人通りが少ない。
大通り使えば良かったかなあ?
変な人でなけりゃいいけど。
どうか、どうか、遭遇しませんように。
……だけど、そう思ったのもつかの間で。
―――ドカッ―――
殴られたような鈍い音が、裏通り中に響く。
「…ひいっ」
「……………お前。俺をなめんてのか?」
だ、だだだだ誰っ!?
「なめては、無い。お前みたいな可哀想なヤローに同情しただけ」
へっ?
えーと。
恐る恐る声のする方に振り返ってみた。
………嘘っ!!
私の目に写ったのは、柄の悪いヤンキーと……辰巳くんだった。
辰巳くんは、殴られたようだ。
口元から血が出ている。
い、痛そう………
「な……何で……」
この声にヤンキーはすぐに反応した。
「あ?誰だお前」
この時、後悔しても遅かった。
なんで、声をだしちゃったんだろう?
どうしよう。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
柄の悪いヤンキーは、私の方に向かってズンズン歩いてくる。
「お前。よくみると可愛いじゃん。それに、良いからだしてるし……」
「~~~~!!」
ヤバイ。
声が出ない。
初めて知ったよ。
本当に怖いときって声もでないんだね。