真帆とは中学から一緒で当然蒼井くんのことを知っている。


そして、私が蒼井くんを好きだったことも知っている。


…え?だったら電車一緒のはず?


真帆は途中で濡れるの嫌だからって、雨の日は車で送ってもらっている。


だから雨の日は別々に登校しているのだ。


「何?まだ好きかもみたいな?」


「えっ、なんでわかるの!?」


真帆、エスパー!?








「いや、なんとなく予想つくし、結局中学のとき告白しなかったし」


「いや、それは……」


勇気なかったというかなんというか。


「まぁ、雫がいいならいいけどさ。でも、また次会ったらチャンスだし、告っちゃえば?」


真帆は面白半分にニヤリと笑いながら言った。


「なっ!久しぶりなのに急にはおかしいでしょ!!」


真帆はすぐ人のことからかうんだから……


「ハハッ!まぁとにかく頑張りな」


「うん」










あれから4日が経った。


……なんで雨降らないんだろう。


いや、好きなわけじゃないんだけど。


ちなみに今日は曇り。
午後から小雨が降ると、お天気お姉さんが言っていたけど……


あ、真帆は今日は委員会で先に登校。


電車内を見回したけど、蒼井くんはいなかった。


もう電車動いてるし、今日も自転車かな。


やっぱり、あれは偶然だったのか……


「はぁ……」








「幸せ逃げるよ?」


「!?」


私の頭の上にポンと手を置いて、フッと笑っている蒼井くんがいた。


「あ、おっおはよう!」


「はよ(笑)なんでそんなキョドってんの?」


「い、いやぁ、あの……」


蒼井くんのこと考えてたからなんて言えない///


「まぁいいけど」


そう言って蒼井くんはクスリと笑っていた。


そんな姿にもキュンとしてしまう私は、やっぱり蒼井くんが好きなんだと思った。








私がじー…っと見ていたせいか、蒼井くんがこっちを向いた。


「ん?」


「あ、いや…今日は電車なんだ」


もうちょっと違うこと言えなかっただろうか。


咄嗟に適当な質問をしてしまった。


「あぁ、午後から雨降るらしいし。濡れるの嫌だからね」


「そっか……」


なんか真帆みたい。よくわかんないけど。


「…」


「…」


何故か沈黙。


なんか話した方がいいかな……








「あのさ」


「はい!」


「しっ」


「ごめんなさい…」


小さい声で謝った。


珍しく蒼井くんから話しかけられたから、びっくりして声が大きくなってしまった。


ここ電車だしね。
何人か私の声に反応してこっちを見ていた。


私は恥ずかしくて俯いた。








「……ククッ」


その声に反応して顔をあげると、隣で蒼井くんが肩を震わせて笑いをこらえていた。


「ちょっと、そんな笑うことじゃないでしょ」


私は今度はちゃんと声を潜めて言った。


「ご、めん…だって…っ」


はぁ、まだ笑ってるよ。


こっちはすごい恥ずかしい思いしたのに……


「はぁー……」


やっと笑いがおさまったみたいだ。


はぁー…って、そんなに可笑しかったかな。


「……あの、さっき何言おうとしたの?」


「あぁ、アドレス教えて欲しいなって」


えっ!?








私はまた大きい声が出そうになって、急いでそれを防ぐように自分の口をおさえた。


「……何してんの?」


今の行動を奇妙に思ったのか、蒼井くんが聞いてきた。


「また大きい声が出そうだったので」


「何それ(笑)」


そう言って蒼井くんは目を細めて笑う。


「もう…ってそうじゃなくて。あの、アドレスって私の?」


「他に誰がいるの?」


「え?いや……」


「俺に教えるの嫌?」


「そんなことないよ!あの……」


「ん?」


「蒼井くんのも、教えてくれる?」








「当たり前じゃん。じゃあ、降りたら赤外線で交換な?」


「うん」


うわぁ、まさか教えてもらえるなんて……











――――――――――――――…


「これで完了」


駅に着き改札を出て、邪魔にならない所でお互いのアドレスと番号を交換した。