「人、が…?」

誰が、とは聞けなかった。悪い冗談だ、と思いたかっただけかもしれない。だけどそう聞いてしまったらそれが、現実になってしまうような気がして。

「そう。人が。」

しーちゃんは微笑を浮かべて会話を続ける。


「いちぎも、よく知っている人だ、よ。」


僕の目の前であんパンを頬張る女の子は、本当に、本当にしーちゃんなのか。今誰かに聞かれても僕はきっと、自信を持って断言する事は出来ないだろう。


本当に、しーちゃん?


「誰だと、思う?いちぎは。」


答えられない、答えたくもない。
しーちゃんは食べ終わったあんパンの袋を丁寧に小さく折り畳みごみ箱に捨てる。こう言う所で妙に几帳面なのだしーちゃんと言う奴は。


「あの、ね」


あぁ、きっとこれは夢なんだ幻なんだ空想の世界なんだ、きっとそうだ。
そして彼女はしーちゃんでは無いんだ決して。


「ようこ先生が、死んでしまった、よ」