親切なその彼はそう言うとゆっくりと私から離れていった。
今更気付いたけど、私はこの知らない男の子とかなり密着してここまで歩いて来たらしい。
それに気付いた私は急に恥ずかしくなって、彼の顔も見ることなく俯いた。
俯いたからって状況は変わらないけど。
その間、その彼はどこかへ歩いて行ってしまった。
そして再び戻って来ると、彼は私の真ん前で立ち止まった。
「はい、これ…」と彼は水に濡らしたハンカチを私の目の前に差し出してきた。
それを受け取る時、初めて彼の顔をはっきりと見詰めた。
少しはにかんだ笑顔と、照れているのか後ろ頭を掻く仕草。
座り込んでる私はそんな彼を見上げていた。