一通り話し終えると、ユミは制服のポケットをごそごそと漁った。

「はいっ、よこたん持ってて!」

そして冷たいものを否応なしにわたしに握らせる。

「つべたっ、え…何、これ?」

八角形の透明な板に、どこかで見たことあるような紋様が書かれている。

「水晶で出来た、太極八卦」
「たいきょくはっけ…?」
「まあお守りみたいなものかな。わたしのだけど、よこたんにあげる」
「…ありがとう」
「持ってて悪いようにはならないと思うよ、ヨウメイ先生のお墨つきだぞ!」
「…うん」

ユミはにぃっと笑って、わたしの頭をぐりぐり撫でた。

「怖いって感情は一つだけじゃないんだよ」
「…どういうこと?」
「恐怖もあれば、畏怖もある」
「畏怖?」
「相手を怖がる気持ちと相手を敬う気持ちが重なったとき、それを畏怖って言うの」
「へ、へぇ…なんか難しい、なんというかさすが占い師…」
「まあ、これは昔読んだファンタジー小説に書いてたことだけどね~」
「はぁ…」
「とにかく、ユミが漆坂に抱いてる気持ちが何なのかははっきりしないけど、怖いからって逃げてばっかりじゃだめだぞ!」
「…うん、わかった」