「よこたん、どうしたの!?」

トイレにいきなり駆け込んだわたしを、先客の女の子たちは怪訝そうな顔をして見る。そしてそそくさと出て行った。

「…なんでも、ない」
「でも!」
「…うそ。なんでもある、かも」

わたしはユミに向けて力なく笑った。

実際に会って会話したことも無い男に怖いと感じる。
これはたぶん正常なことでは無いと思う。
だけど、目が合うと起こるこの恐怖の感情は何なんだろう。

…漆坂って、どういう人なんだろう。
漆坂について調べてみたけど、これは恋なんだろうか。
恋ではないとは、思う。


ぐるぐると渦巻いている心のうちをユミにぶつけた。
ユミは黙って聞いていた。