「えええそんなことは無いよ!」
ユミがにやにやしながら聞く。
「ふーん、まあ良いけどぉー」
拗ねたふりをして校庭を見る。
するとちょうど、漆坂とその友達が校庭の木陰で涼んでいる最中だった。
とある教室から「りょういちさーーーーん!!」と声がした。
身を乗り出して見ると、校門前でメアドを渡していた女の子の取り巻きだった。
漆坂はその教室に向かって、さわやかに手を振る。
すぐさま黄色い歓声が沸き立った。
「おお、やってるやってる」
「ほんとだね…」
漆坂は友達に小突かれながら、笑い合っている。
じっとその様子を見ていると、ふとこちらの視線に気づいたのか、漆坂がこちらを見てきた。
怖い。
怖い、怖い、怖い。
目を見つめられたのはあの日以来だ。
怖くてどうしようもなくなって、わたしは窓辺から走ってトイレへ逃げた。
「あ、ちょ待って!!よこたん!!!!」