それから何週間か経った。
ユミはあいかわらずで、だから逆に漆坂のことは聞けなかった。

クラスの女子に漆坂のことを聞いてみたりした。
すると漆坂のことがだんだん分かってきた。
今は3年生で、進路は親の権力を使ってもう決まっているらしい。
もともとそんなことしなくたって、頭はものすごく良くて、入部しているチェス部では良い成績を収めているようだ。

その女子に、「漆坂さんかっこいいよね、よこたん惚れたの?」とニヤニヤされたけど、そんなもんじゃない。

そんなもんじゃない、と、思う。


廊下で見かけると目で追うのは気になるからであって、惚れた腫れたではない。


「よこたん、最近ぼーっとしてるねえ」