わたしはもやもやしたものを心に残して、タクシーの運転手に家の住所を告げた。

何を言おうとしたんだろう。
それに、あんなに急に帰らせようとしなくても…。
ぶすっとしていると、タクシーの運転手が話しかけてきた。

「その制服、星皐学院ですね」
「…はぁ、まぁそうですけど」
「うちのお得意なんです、いつもご贔屓にさせて頂いて」
「生徒はみんなお金持ちですからね…」

わたしは少し自虐的に笑った。

「そういえばさっきの方、どこかで見たような…」
「よくテレビに出てますよ、彼女。わたしの友達なんです」
「わかった! もしかして『JIP!』に出てる、あの占い師さんですよね」
「そうですよ、よくわかりましたね…」
「少しミーハーなもんで」

運転手はからからと大声で笑った。


話しているうちに家についた。
ユミからもらったお金から十分にお釣りが出る。
あした、お釣りを返そう。
家の戸を開けると、晩御飯のいい匂いがした。