これが、私と紫月が、決めた双子関係みたいなもの。





それから、私たちは、より一層、いつも一緒で、二人とも、相手の傍を離れずに、ずっとずっと仲が良かった。





そして、六年生の卒業式。





私たちは、こんな約束をする。





『もう卒業式、終わっちゃったな。』





『そうね、少し寂しい…。』





『……俺も。』





私と紫月は、六年生だけど、手を繋いで、木を覆い尽くすほど咲いている桜を、眺めながら、少し暗い気持ちでいた。





『………なぁ、』





『何?』





『二人だけの秘密の約束をしないか?』





何故か、そんなことを、言い出す紫月。





『………いいよ。』





訳が解らなかったけど、私は、少し嬉しくなって、オッケーした。








『あのさ、もしこの先、どんなことが合っても、紗姫の傍にいる。
それが、例え、最悪な運命だとしても、絶対に、紗姫を見捨てて、傍を離れたりしない。
この桜の木に誓う。』





『ッ………、』








私は、とても嬉しかった。

紫月が、そんなことを、言ってくれるなんて、思ってもみなかったから。





『紗姫は、意外に涙脆いだな。』





フッと、優しく笑う紫月。





そんな紫月に、私は、ドキッとした。
そして、紫月が、いつも以上に、カッコよく見えた。





『わっ…私も、例え、どんなことが、合っても、紫月の傍を離れたりしないわ。
………それが、駄目なことだとしても。
ずっとずっと傍にいるわ。
この桜に誓って。』





私は、泣きながら、紫月に、笑いかけた。




『絶対に、約束だ。』





『ええ、約束よ、絶対に。』











――この時、私は、実の双子の兄に、恋をした。
それは、すぐにでも壊れてしまう、脆い恋を、してしまったんだ――……。










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昔の約束を、貴方は、忘れてしまったの――?







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――高校2年の春。





私たちは、2年へと進級した。





何故か、中学3年生、紫月は、いきなり彼女を作り出した。



それも、10人、20人……と、もう数えきれないほど。






家にも、あまり帰らなくなった。






私は、心配という感情で、心が覆い尽くされる。




紫月に

「何故、いきなり彼女を作り出したの?」

と聞いてみたけれど

「別に。」

としか言わない。











だんだん、私と紫月は、お互いに話さなくなっていった。





好きという気持ちが膨らむばかり。
ただ、その反面、不安も膨らむばかりだった。








そんなある日、私は、紫月を私の部屋に呼んだ。






「何?部屋に呼び出して。」






「ねぇ、何で、いきなり彼女作り始めたの?それも、何人も…。
何か…理由があるんでしょ…?」






「…………………別に。」






「もう、紫月は、忘れちゃったの…?
小6にした、約束……。」






だんだん、恐くなる。
紫月が、私を、拒絶して、嫌いになっているようで。
もう、紫月は、私に、心を開いてくれないようで。
寂しくなるの。






「……………覚えてるよ。」






「なら、何でなの…?
何で、私の傍に…ううん、心を開いてくれなくなったの…?」





「……心を閉ざした訳じゃない。ただ……」






「ただ……?」















「自分のブレーキが、止まらなくなるから。」






ボソッと言ったようで、よく聞こえない。






「えっ…、何…?」






「いや、みんなが、彼女作ってるから、焦って、さ。
見た目と性格を変えようと、思って、素っ気ない態度取っちゃって。
……ごめんな?紗姫。」






「そうだったの……良かった。
でも、紫月、今度からやめて?
嫌いになられたと思っちゃうから。」






「そんなことない!
嫌いになるなんて、あり得ない。」






久しぶりに、紫月の笑った顔を見る。
本当に良かった……嫌われなくて。






「はぁ……ちょっと、手強くなるな。」






「何?何か言った?」






「いや、何でもない。」










紫月とまた、わかり会えた。
そんな日になった。












「ねぇねぇ、紗姫知ってる?」






紫月と仲直りから、1週間の朝、学校へ、紫月と来たとたん、親友の牧野愛実から、そんな言葉をかけられた。






「何を?」






「今日から、この学校に、超金持ちの、兄妹が、来るんだって!」






「…………で?」






そんなことを言われるが、私は、素っ気ない態度を出す。






「も―、紗姫は、本当に男子に興味ないんだから!」






「興味ないんじゃなくて、一筋なの。」






「え?何か言った?」






「ううん、何でもないわ。」






愛実に、聞こえないように、思ったことを、ボソッと言った。






ガラッ

「ほら、席につけ―!ホームルーム始めるぞ―。」






「あっ、また後でねっ、紗姫。」






「ええ、また後で。」






転校生かぁ…どんな人かな…。
ま、私には、関係ないけど。






「よし、転校生を紹介するぞ―!しかも、イケメンなんだぞ―?ほら、入ってこい!」






「はい。」






ガラッと、ドアが開けられたとたん、私は、目をまるくさせた。











「桜井朱翔です。宜しく。好きな人は…」





「「好きな人は!?」」






女子は、とっても興味津々みたい。
周りを見てみると、私以外は、みんな身体を寄せて聞いている。






「……………早乙女紗姫。」






「「ええええええ!? 」」






女子はめちゃくちゃ驚いてる。
私は、至って冷静だ。

だって、幼馴染みだし。






「なら、早乙女のところがいいなっ。それでいいか?」






「はい、いいですよ。」






「……………はぁ。」






さて、今日から、憂鬱な日々になるなと私は、思っていた。






「……………最悪だ、ライバル出現かよ。」






もう1人、紫月も憂鬱な日々になる予感をしていた。












「あ、後1人転校生がいるぞ〜!可愛いんだぞ〜。」






「「キタァァァァァ!」」






「はいはい、静かに。じゃあ、入ってきなさい。」






「はい。」






この声は………






「さ、自己紹介な。」






「あっ、はい。私は、桜井緋里です、宜しくお願いします!私の好きな人は…」






やっぱり…。来ちゃったんだ。
はぁ……。






「「好きな人は!?」」





嫌気がさしてる私を他所に、
男子が俺かな?とか、思いながら聞いているのが、よく解るくらいな顔をしている。






「………早乙女紫月君です♪」






「「はああああああああ?!」」






はい、男子の絶叫。

はぁ……、ライバル出現ですか。
私は、心の中でため息をついた。






「じゃあ、もう1人の早乙女の隣な。」






「はいっ!」






「「チッ……また、面倒くさいことになった…。」」






私と紫月がハモりながら、舌打ちをしている時に、朱翔と緋里は、ニヤニヤと妖しい笑みをしながら、喜んでいた。