『で、二人とも、どっちが上になったの?』
『えっと……
俺が兄で、』
『そして……
私が姉よ。』
『……………………え?』
目をきょとんとする母。
『だから、俺は兄、紗姫は姉。ってこと。』
『要するに、二人とも、上ってことなの?』
『『そう。』』
コクリと頷く私と紫月。
『全く、二人とも考えたなぁ〜。
フフッ、どっちも上になるなんてね。』
『まぁな。』
『そうね。』
母は、ずっとニコニコしていた。
何故かは、解らないけど。
・
これが、私と紫月が、決めた双子関係みたいなもの。
それから、私たちは、より一層、いつも一緒で、二人とも、相手の傍を離れずに、ずっとずっと仲が良かった。
そして、六年生の卒業式。
私たちは、こんな約束をする。
『もう卒業式、終わっちゃったな。』
『そうね、少し寂しい…。』
『……俺も。』
私と紫月は、六年生だけど、手を繋いで、木を覆い尽くすほど咲いている桜を、眺めながら、少し暗い気持ちでいた。
『………なぁ、』
『何?』
『二人だけの秘密の約束をしないか?』
何故か、そんなことを、言い出す紫月。
『………いいよ。』
訳が解らなかったけど、私は、少し嬉しくなって、オッケーした。
・
『あのさ、もしこの先、どんなことが合っても、紗姫の傍にいる。
それが、例え、最悪な運命だとしても、絶対に、紗姫を見捨てて、傍を離れたりしない。
この桜の木に誓う。』
『ッ………、』
私は、とても嬉しかった。
紫月が、そんなことを、言ってくれるなんて、思ってもみなかったから。
『紗姫は、意外に涙脆いだな。』
フッと、優しく笑う紫月。
そんな紫月に、私は、ドキッとした。
そして、紫月が、いつも以上に、カッコよく見えた。
『わっ…私も、例え、どんなことが、合っても、紫月の傍を離れたりしないわ。
………それが、駄目なことだとしても。
ずっとずっと傍にいるわ。
この桜に誓って。』
私は、泣きながら、紫月に、笑いかけた。
『絶対に、約束だ。』
『ええ、約束よ、絶対に。』
――この時、私は、実の双子の兄に、恋をした。
それは、すぐにでも壊れてしまう、脆い恋を、してしまったんだ――……。
・
**;;;☆**;;;☆**;;;☆**;;☆**
昔の約束を、貴方は、忘れてしまったの――?
**;;;☆**;;;☆**;;;☆**;;;☆**
――高校2年の春。
私たちは、2年へと進級した。
何故か、中学3年生、紫月は、いきなり彼女を作り出した。
それも、10人、20人……と、もう数えきれないほど。
家にも、あまり帰らなくなった。
私は、心配という感情で、心が覆い尽くされる。
紫月に
「何故、いきなり彼女を作り出したの?」
と聞いてみたけれど
「別に。」
としか言わない。
だんだん、私と紫月は、お互いに話さなくなっていった。
好きという気持ちが膨らむばかり。
ただ、その反面、不安も膨らむばかりだった。
・
そんなある日、私は、紫月を私の部屋に呼んだ。
「何?部屋に呼び出して。」
「ねぇ、何で、いきなり彼女作り始めたの?それも、何人も…。
何か…理由があるんでしょ…?」
「…………………別に。」
「もう、紫月は、忘れちゃったの…?
小6にした、約束……。」
だんだん、恐くなる。
紫月が、私を、拒絶して、嫌いになっているようで。
もう、紫月は、私に、心を開いてくれないようで。
寂しくなるの。
「……………覚えてるよ。」
「なら、何でなの…?
何で、私の傍に…ううん、心を開いてくれなくなったの…?」
「……心を閉ざした訳じゃない。ただ……」
「ただ……?」
・
「自分のブレーキが、止まらなくなるから。」
ボソッと言ったようで、よく聞こえない。
「えっ…、何…?」
「いや、みんなが、彼女作ってるから、焦って、さ。
見た目と性格を変えようと、思って、素っ気ない態度取っちゃって。
……ごめんな?紗姫。」
「そうだったの……良かった。
でも、紫月、今度からやめて?
嫌いになられたと思っちゃうから。」
「そんなことない!
嫌いになるなんて、あり得ない。」
久しぶりに、紫月の笑った顔を見る。
本当に良かった……嫌われなくて。
「はぁ……ちょっと、手強くなるな。」
「何?何か言った?」
「いや、何でもない。」
紫月とまた、わかり会えた。
そんな日になった。
・
「ねぇねぇ、紗姫知ってる?」
紫月と仲直りから、1週間の朝、学校へ、紫月と来たとたん、親友の牧野愛実から、そんな言葉をかけられた。
「何を?」
「今日から、この学校に、超金持ちの、兄妹が、来るんだって!」
「…………で?」
そんなことを言われるが、私は、素っ気ない態度を出す。
「も―、紗姫は、本当に男子に興味ないんだから!」
「興味ないんじゃなくて、一筋なの。」
「え?何か言った?」
「ううん、何でもないわ。」
愛実に、聞こえないように、思ったことを、ボソッと言った。
ガラッ
「ほら、席につけ―!ホームルーム始めるぞ―。」
「あっ、また後でねっ、紗姫。」
「ええ、また後で。」
転校生かぁ…どんな人かな…。
ま、私には、関係ないけど。
「よし、転校生を紹介するぞ―!しかも、イケメンなんだぞ―?ほら、入ってこい!」
「はい。」
ガラッと、ドアが開けられたとたん、私は、目をまるくさせた。
・
「桜井朱翔です。宜しく。好きな人は…」
「「好きな人は!?」」
女子は、とっても興味津々みたい。
周りを見てみると、私以外は、みんな身体を寄せて聞いている。
「……………早乙女紗姫。」
「「ええええええ!? 」」
女子はめちゃくちゃ驚いてる。
私は、至って冷静だ。
だって、幼馴染みだし。
「なら、早乙女のところがいいなっ。それでいいか?」
「はい、いいですよ。」
「……………はぁ。」
さて、今日から、憂鬱な日々になるなと私は、思っていた。
「……………最悪だ、ライバル出現かよ。」
もう1人、紫月も憂鬱な日々になる予感をしていた。
・