「まぁ、紗姫が俺に、惚れるのもそう長くないだろうけど。」
「はぁ?あっあり得ないから…絶対。」
「その強がりが、いつまで持つかな〜」
クスクス、と笑いながら、私の反応を楽しむかのように、妖艶な目で見ていた。
絶対に………好きなんて、ならないんだから。
そう強く思った、一週間後の朝だった。
・
昼休み。今日は、朱翔と二人で屋上に行った。
「……………見事に、誰もいないわね。」
「だな。」
「ベンチにでも座る?」
私は、そこにあったベンチを指していう。
すると、朱翔は一瞬考えた顔をした。
「いや、床でいいや。」
「そう?なら、床にしましょうか。」
「……………。」
ニヤッ、と一瞬朱翔は、朝のように妖艶に笑い、平然と弁当を開け始めた。
さっきの笑いはなんだったのかしら?
少し疑問に想ったけれど、私も、弁当を開け始めることにした。
「あ、紗姫の卵焼き美味しそう。」
「いる?」
「あぁ。」
朱翔の弁当に、卵焼きを置く。
・
「違う。」
「え、いらないの?」
「口移しがいい。」
「なななっ!」
一気に、私の顔が紅くなる。
「ねぇ…お願い?」
「いっいやよ!」
「じゃあ、クラスの奴に、紫月が好きなの言っていいんだな?」
「うっ……。」
痛いところを刺される。
絶対に、紫月が好きなのを言って欲しくない!
「わっ分かったわよ!でも、一回だけだからね!」
「あぁ。」
私は、卵焼きを口に半分入れる。
「いっいくわよ…。」
私は、紫月の口に卵焼きを持っていく。
すると、グイッ、と朱翔から、頭を引っ張られた。
「んっ……!?」
「…甘いな。」
いきなりキスをしてきた朱翔。
卵焼きを口に含みながら、キスをしてくる朱翔の言葉は、卵焼きのことを言っているのか、それとも、隙を見せたのを言っているのか解らない。
「……んっ…!?」
息をしようと口を開けたら、舌が入ってきた。
「んっ…ふっ……やぁ…。」
「ヤバイ、めちゃくちゃ可愛い…そそられる……壊したい。」
「なっ……いやぁ…。………!!!」
すると、朱翔の手が、私の体を触ろうとしていた。
いやっ……絶対に、好きな人以外に、こんなことは、したくない…!
・
すると、ガチャッ、と屋上のドアが開いた。
「なっ……!」
「「………!!」」
その先を見ると――
紫月が、いた。
「違うのッ…、紫月、これはね……!」
「何?俺は、別に気にしてないけど?ただ、自分は、彼女作るなとか言っといて、彼氏を作るのは、どうかと思ったけど。」
「っ………!」
冷たい顔で、言う紫月。
私は、取り返しのつかないことをしてしまった…!
「じゃあな。」
そういって、バタンッ、と屋上のドアは、私と紫月の間に壁ができたかのように、閉まった。
この時、私と紫月に、新たな悲しみの壁が出来てしまった。
「……………やっぱ、こんなもんか。」
朱翔は、紗姫が泣きながら、床に座り込んでるのを見て、そう言って、屋上をでた。
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貴方に嫌われたら、私は、どう生きていけばいいの―――?
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あれから、一週間。
私は、紫月と一度すら、あっていない。
紫月は、ずっと学校にも来ないし、かといって、家にもいない。
多分、女の子の家にでも、泊まっているのだろう。
そんな様子に少し安心している、醜い私がいる。
今、紫月に会っても、気まずいし、紫月は、目すら合わせないだろう。
あの後、私は、一日、学校を休んで、家で、ずっと泣いていた。
だから、次の日は、目が酷く赤くなっていた。
そして、あれから、朱翔を避けている。
・
それに合わせて、朱翔も、話し掛けて来ないことに、安心をしていた。
だけど、それは、作戦だったということとは、今の私は、知る由もない。
昼休み。
私は、屋上に来ていた。
「ねぇ、紗姫。」
「しゅっ、しゅうとぉぉっ?!」
「………アハハッ、紗姫面白い。」
「っ………!!」
突然、ボ―ッとしていた私に、久しぶりに、朱翔に話し掛けられて、ビックリして、変な声が出てしまった
うぅ…恥ずかし過ぎるでしょ…。
ビックリしたからって、あんなこと言うなんて…。
あ―、もう穴があったら、入りたい…。
今、絶対顔紅い…。
「でも、そんな所も可愛い。」
「なっ……!!うるさいっ……。」
「もっとよく見せて?」
フイッ、とそっぽを向いたけど、クイッ、と顔を朱翔の方へ向けさせられる。
・
「っ……。」
「その顔………すげぇそそられる。」
「はぁっ…!?んっ……」
朱翔が、いきなりキスをしてくる。
とても優しくて、でも、少し荒々しさのあるキス。
酸素が足りなくて、空気を吸おうと口を開けたら、待ってましたとでも言うように、舌を入れてくる朱翔。
「俺が、お前の全部を受け止めてやるよ…。」
「ふぁっ……んっ………」
逃げても、逃げても、追いかけてくる朱翔の舌。
何も考えられなくなる……。
「大丈夫、優しくするから……。」
そう言って、倒れかけそうになる私を優しく、私の腰に手を掛け、抱き止めて、ゆっくりと押し倒す朱翔。
・
「いやぁっ………。」
怖い…いやっ……。
するなら、好きな人とがいいっ……。
抵抗をするが、朱翔はやめてくれない。
「紗姫…俺なら、紗姫を幸せにする。紫月みたいに、お前を一人にはしない…!」
「ッ……!」
「だから………俺と付き合ってくれ…。」
朱翔…何で、そんな苦しそうな顔をするの?
どうして………?
私は、前を向いて、朱翔に、問いかけた。
「…もし、朱翔と付き合ったら、紫月を忘れられる…?
前から、ずっと塞いでた苦しい想いも、消えて無くなる…?」
「俺が、忘れさせてやる。頭の中は、紫月じゃなくて、俺だけしか、考えられなくなるようにしてやる。」
「朱翔…まだ、紫月のことを忘れられないかもしれない。それに……抱かれるのも、まだ、怖いから、無理…。それでもいいなら――
私と付き合ってくれる…?」
私がそういったら、朱翔は、優しく笑って、私にキスした。
「……あぁ、紗姫が、ちゃんと………俺のことを好きになった時に、抱く。約束する。」
「っ……ありがとう…。」
私は、この時は、この決断がいいと思ってた。
だけど、それを間違った決断をしたというのは、もう少し後の話。