松橋高校、校舎裏。
それは、突然すぎる出来事だった。
『あ、あの、、』
少し派手な少年が振り返ると、小さな女の子が少しおどおどしながら立っている。
『?、、俺?』
彼女は、レンズ越しに瞳をキョロキョロさせながら、ギュッと自分の手を握る。
『み、峰 頼子っていいます』
『、、、』
彼は、頼子を凝視する。
『沢宮 新くん、あ、あの、、ゎ、私にお付き合いしていただけませんかっ』
新の空いた口は、塞がらない。
彼女は、頑なに閉じた目を開こうとしなかった。
『、、えっと、、』
新は、困惑していた。
どう考えても、目の前の彼女との接点が見当たらず、新とは明らかに真逆の地味な雰囲気の彼女だ。
一方の新は、遊び人で有名な女好き。
何股かけてるか本人でも分からない時がある。
『悪いけど、俺、峰さんの事よく知らないし、、』
『へ?、、』
今度は、彼女がきょとんとしていた。
『いや、だからさ。付き合うって俺は、峰さんと初めてあったばかりだし、、』
彼女が慌てて口を開く。
『え、あ、あの。そうゆう付き合うではなくて、ですね、、』
『え?』
交互に顔がぽかんと抜ける。
『すみません。言葉を早めすぎました』
頼子は、深呼吸して胸を押さえた。
『どーゆう事?』
『簡単にお伝えすると、ご指導をお願いしたいのです』
『は?』
頼子は、恥ずかしそうにうつむく。
『実は、、父の会社の為、高校卒業と同時に結婚が決まっております、、でも、私は、誰かとお付き合いをしたことも、好きになった事もなく、このままでは、相手の方にご迷惑だと思いまして、、』
『、、、』
頼子の話しでは、余りにも無知な事が恥ずかしいので嗜み程度にどうゆうものかを教えて欲しい、と云う事だった。
『んー、、』
『だ、ダメでしょうか、、』
新は、呆然と考えていた。
それで、俺に得は、あるのか、、。
『なんで俺なの?』
『あ、有名だからですよ』
新の顔つきが変わる。
『あー、遊び人でね。なら尚更やめ』
『?、とても優しくて楽しいって、有名です』
頼子が笑った。
新は、ギョッとする。
『だから、新くんにお願いに来ました。ダメでしょうか、、』
今度は、レンズ越しでも分かる、強い瞳が真っ直ぐに新を捉えていた。
『、、、か、考えさせてくれる?』
彼女は、パッと笑って頷いた。
『あ、私は、3年A組にいます』