その一ヵ月後。


お父さんは私にこう言ってきた。


「すまん、俺はもう……お前を育てられない。


 体力の限界なんだ。
 精神的にも耐えられない。


 お金はさ、ちゃんと……振り込むから。
 お前が苦労しないようにはする。


 お母さんが出て行って、しばらく経つと、どれだけあの人が必要だったかわかったよ。


 あの人がいたから、俺たちは笑っていられたんだな。」


私はそのお父さんの言葉を聞いて、頭にきた。


「今から後悔したって遅いに決まってるじゃん!!


 元はと言えばお父さんが原因でしょ!?
 勝手なことばっかして、お母さん傷つけて……。


 自分が何したかわかってんの!?
 もう私たちはバラバラなんだよ!


 どうせ今も浮気相手と関係保ってるくせにっ……。


 お母さんが必要とか、簡単なこと言わないで!!」


そう私はお父さんに言った。
お父さんは、うつむきながらこう言った。


「そうだよな、お前の言うとおりだよ。
 本当、バラバラだ。


 ごめんな。


 この家を、守ってくれ。」


私はお父さんに反抗した。


「……っ私だって苦しいよっ!!


 お母さんを捨てて、この家まで捨てるつもり!?
 私のことも、捨てるんだ?」


「……すまん。」


目の前が、真っ暗になった。


 へぇ、そうなんだ。
 裏切るんだ。
 捨てるんだ。


 みんなみんな……手放すんだ。


そう思いながら、私はお父さんに言ってやった。


「あんたなんて、もう私のお父さんなんかじゃない。


 勝手にしなよ。
 

 間違った答えを、選んで生きていきなよ。」


お父さんは「本当にごめん。」と言って、荷物をまとめて出て行った。


涙なんか出なかった。
悲しみも襲ってこない。


でも……なんなんだろう、この胸のざわつきは。
なんとも言えないような感情が、私を悩ませた。