帰り。


 やっと放課後だ。
 なんか今日は長かったな。


私は放課後になると、5時まで学校で本を読む。


教室で持参していた本を開いた。


みんなは次々へと去っていく。


 みんな朝は遅いのに、帰りだけは早いんだな……。


そんなこと思いつつ、私は本を読む。


教室が静かになった頃、私はもうみんな帰ったんだと判断した。
でも、なぜか後ろのほうに人の気配を感じた。


パッと後ろを振り返る私。


すると、若宮くんがいた。


「……俺も、放課後残ろうと思って。……一緒だね。」


なぜか聞いていないのにそう話してきた若宮くん。
しかも、なにかしら控えめに言ってきた。


「聞いてないし。」


「……ごめん。」


「だから謝んなくていいし。」


「……。」


なにこの大人しいの。


どうしたのこの人。


「あ、夏野さんてさ、どうして今日放課後残ってんの?」


急に話を変えて聞いてきた若宮くん。


その質問に、私は答えなかった。


「言わない。それに残ってるのいつもだし。」


家政婦から逃げてるなんて、親がいないなんて、言いたくない。


「……そっか。」


「そういう転校生くんはどうして?なんで残ってんの?普通転校してきて1日目なんて、すぐに家に帰るイメージしかないんだケド。」


「実は俺も言えないw」


若宮くんは、無邪気そうに笑って答える。


「ふぅん。」


「なぁ、今日……校舎案内は無理?やっぱり、夏野さんにしてもらいたい。ダメか?」


「……別に、いいけど。」


「マジで!?やったぁw」


一気に元気が出たみたいだ。
若宮くんの笑った顔は、なんだかキラキラしてた。