「…えっと、隣、いい?」 真音は席に置いていた鞄をどけた。 きっと、誰も座らせないようにしてたのだろう。 バスが発進する。 特に会話のないので、時間だけが過ぎるのだと思った。 「…知らない人が、隣に座るのが嫌だった。それと、紗菜ちゃんのこと……」 なるほど、と僕は思った。 だから荷物のとなりに座っていたわけだ。 「紗菜ちゃん?」 「大森紗菜ちゃん。紫月くんの隣に座らせてあげたかったんだ」