――カチャリ。
「……へ?」
開いたドアの向こうの景色に、乃碧は思わず素っ頓狂な声を漏らした。
二十歳前後の男性の顔。
それもドアップ。
「お待ちしておりました」
にこりと笑んで言うが早いか、男はその場に跪き、乃碧の手を取る。
(えっと、これは何かしら? 霊では無いようね……)
乃碧は混乱しつつも、落胆していた。
幽霊の登場を期待していたのだが、出てきたのはしっかりと実体のある人間だった。
(ともかく、この状況を何とかしなくては……)
「気安く触らないでいただけるかしら?」
相手に付け入る隙を与えてはならない。
そう思ったからこそ、乃碧はわざと高慢な態度に出たのだが次の瞬間、男が口にした言葉に彼女は己の耳を疑うこととなる。