しかし忘れちゃならないが杜若は愛娘の護衛を任されるような幹部である。
クルリ、と杜若は居並ぶ面子に顔を向けた。
「オメェラここはもういい。さっさと持ち場へ戻れ。」
慇懃にしてドスの聞いた声に、強面の男達はぴりっと空気を変え「ウスッ」と蜘蛛の子を散らしたように飛び去った。
再び振り向いた杜若は相変わらず穏やかな笑顔で。
「さすが壱吾さんは嬢が選んだ方だ。肝が座っていらっしゃる。」
……いえ。
表情が豊かじゃないだけで、かなりビビってます。
ささどーぞ、と促され、壱吾クンは腹を括って踏み込んだ。
夕食に想いを馳せてゴキゲンな苺ちゃんの後に続きながら、杜若が申し訳なさそうに話しかけてくる。
「本日は態々御側路願ってすいやせん。一応説得はしたんですけどオヤジがどうしてもって聞かなくて…止められず。」
「………。」
杜若の憐憫の眼差しに、もはや黙り込むしかない壱吾クン。
…俺は明日の朝日を拝めるだろーか……?