壱吾クンが若干項垂れかけていたトコロへ、男が一人寄ってきた。
「お帰りなさいやし。お嬢。」
おっと。
黒スーツは他と変わりないが、後ろへ撫でつけた黒髪と整った生真面目そうな面差しが、本物の執事のような男だ。
「タダイマァ。壱吾クン、この人はパパの部下さんだけど、ちっちゃい頃からわたしのお世話してくれるかっきーだょ。」
「お嬢の世話係をしてやす。杜若(かきつばた)と申しやす。」
「……コレつまらんモンっすけど。」
「ご丁寧にアリガトウございやす。壱吾さんはお若いのにしっかりした方ですね。」
壱吾の差しだした手土産を受け取って、ほほ笑む杜若。
いえ、こちらこそこの屋敷内でアナタのようなマトモっぽいヒトに出会えてちょっと安心イタシマシタ。