放課後




クラスメイトが教室からぞろぞろと出ていく。





あたしも荷物を整理して教室を出た。





もちろん頭の中はさっきの謎でいっぱい。









家のインターホンを鳴らす。







あれ?お母さんまだかな。






あたしは鞄の中を探って鍵を探した。





ん?ない?


うそ、ない?!






最悪だ。







家に入れないあたしは仕方なく来た道を戻った。






外で待つのは恥ずかしいしあまりにも暇すぎるから、学校に戻って勉強することにした。







重い足をなんとか運んでさっき出たばっかりの教室のドアを開ける。








「「あ。」」









2人の声が重なる。







教室にはぽつんと1人、相澤くんがいた。







声を出したのは言うまでもなくあたしと相澤くんで。







お互い意外な人物の登場に思わず声が出てしまったのだ。








しばらくの沈黙。







あたしはドアに手をかけたまま、教室にまだ入れずにいた。






沈黙をやぶったのは相澤くんだった。








「梶宮さん、どうしたの?忘れ物?」









相澤くんは、いつも挨拶をしてくれるときの声で話しかけてきた。








その顔は、まるで夏の海にキラキラと反射する太陽の光のような笑顔で。








あたしは彼の顔に気がいってしまって何も言えない。







いつもと一緒だ。







そこで初めて気づいた。







あたしが話せない原因って






これ?







あたしが相澤くんと話せないのって、あたしが相澤くんの笑顔に気をとられているから?








それって.......まさか........




そう思ったとき、






ガタ







相澤くんが立ち上がった。







あたしはなにも言わなかったけど内心驚いた。







ど、どうしたのかな。








すると、相澤くんはあたしの気持ちがわかったかのように言った。







「ごめんね、梶宮さん。困るよね。こんなの。俺、違う教室行ってくるわ!」






相澤くんはそう言いながら開いていたノートや参考書をパタパタと閉じた。







ちょっと、まってよ。





心の中で思った。








どういうこと?困る?あたしが?なんで?







疑問が次々と浮かび上がってくる。








相澤くんの言葉の意味がさっぱりわかんない。







あたしはただ見つめることしかできない。








これでいいの?






もしかしたら明日相澤くんはあたしに挨拶してくれないかもしれないのに?







それでも、あたしはなにもできないの?








あたしの気持ちがモヤモヤしてるワケはわからないけど、相澤くんが挨拶をしてくれないのは嫌だってハッキリ思った。








そのとき、ハッキリと。








相澤くんは机の上をきれいにしてあたしが立っているドアの方へ向かってきた。








そして、あたしの目の前で立ち止まって、







「ばいばい」






そう言った。








ばいばい......?








それって、どういうばいばいなの?






もしかして、ただのばいばいじゃないのかな?






もしかして、明日からもう挨拶してくれないのかな?







そう思った瞬間、