「春(しゅん)おはよー!」



「おはよ!」






教室に心地よく響く声に自然と反応してしまう。








窓際の1番後ろの席からドアの方へ視線を向けると、スラリとした高身長の好青年の姿。







そう。この好青年こそが相澤春─────

あたしの彼氏。








あたしは相澤くんの姿をまじまじと見ながら、改めて彼があたしの恋人ということに違和感をいだく。







「梶宮さん、おはよ。」








「..........」









あれ、相澤くんがあたしの目の前にいる?






さっきから見てたはずなのに、あれ、瞬間移動?






とっさのことにあたしの頭はフル回転していた。







あれ、てか、いま、あたし、挨拶された?








まだ残ってる耳の記憶をたどる。



『梶宮さん、おはよ。』





あ、されてるわ。







で、あたしはまだ返してないから、返さないと。






「.........」







あたしは相澤くんをただ見つめることしかできなかった。







なにこれ。






返そう、返さなきゃ、と思えば思うほど顔の筋肉がこわばってきて口がぴくりとも動かない。






「............」








どうしよう。






そう思ってもどうしようもなくて、もうどうしようもないと思った瞬間、顔が勝手に下を向いた。






俯きながら視線を限界まで上に向けると、あたしの机からそっと離れてく相澤くんの制服が見えた。









あぁ.......またか..........








あたしは机を見つめながら心の中で呟いた。