「うえーん!!今朝も市橋先輩見れなかったよーっ!!」


案の定、今日もべそをかいて泣きついてくる。


男の名前を叫びながら、別の男に抱きつくこの状況の異常さに何でこいつは気付かないのか?

馬鹿の2文字で片付けるには少し荷が重過ぎるように思う。



千紗は昔から朝に弱い。

俺はそれを知っていて千紗を迎えに行かない。



「お前も物好きだな。あんな無愛想の何処がいいんだか」


半ば反射のように小さな身体を抱き込もうとする手を薄ら笑いしながら止める。


これは小さな意地悪に対する戒めだから。



「市橋先輩は無愛想じゃないの、寡黙なだけ!!」


同じだろ、無愛想も寡黙も。



「うう、ひと目よ。ひと目見ることができれば私は今日も1日ハッピーに過ごせるのに。どうしてなの!!朝ご飯食べないで出たのにーー!!」

「その身長どうにかしないと無理だな。それと最後のは寝坊したお前が悪い」


一生チビのままでいろよ。



「あみちゃ~ん、夏希がいたいけな女の子を苛めるよ~~!!」

「よしよし、ちぃちゃんは可愛いと思うよ」

「マジで? コイツが? どこ?」



あ~、面白くねー。

いじめっ子は嫌いなのかよ……?