「キャーー、陽向くん!!!!」


冬の薄い空に響き渡る、鬨(とき)の声。

戦争でも始まるんだろうか?



「陽向くん、こっち向いて~!!」

「陽向く~ん!!!!」


怖い顔した女の人たちから次々と掛けられる声。


目の前にある門を見つめて思う。



ここは動物園ですか?



不特定多数の人の口から出てくる自分の名前に次第に不安になる。


俺、何かやらかした?



真正面から見ると怖いから、なるべく下を向いて校門を潜る。


背中に降りそそぐ声を全力で無視して靴を履き替え、教室へ。



つ、疲れた……。


自分の席に着いてやっと落ち着くことが出来た。



こんなことが毎朝毎夕。

泣きたい。


何でこんな状況に俺は立たされているんだ?



高校生活。


一番好きな時間は授業中。

とりあえず誰とも話さなくていいから。



休憩時間は苦手だ。

廊下から窓の外から、常に誰かに見られている気がする。



この学校、幽霊でもいるんじゃないか?


御祓いしてもらわなきゃ!!

ダメだ、知り合いに御祓い出来る人いない。

いたらいたで怖いけど。



はっ、また今、視線が!!


恐々振り向くとやっぱり誰もいない。


先生、やっぱりこの学校何かいます!!



相談したいけど、する人いないし。

したらしたで自意識過剰って言われそうだし……。




朝のSHRまであと3分27秒。



頼む。

お願いだから早く授業始まって下さい。