「キャーー、陽向くん!!!!」


私立高見月学園高校校門前。


寒空に響く、黄色い声。

今日も熱い、戦いが始まる。




*****


「うえーん!!今朝も市橋先輩見れなかったよーっ!!」


朝のSHR終了後、幼なじみの夏希に泣きついた。


「お前も物好きだな、あんな無愛想の何処がいいんだか」

「市橋先輩は無愛想じゃないの、寡黙なだけ!!」


呆れたように言う夏希に反論する。



分かってない。

夏希は市橋先輩の魅力を分かってない。



市橋陽向(いちはし ひなた)

それがこの高見月学園一モテる男、そして私の憧れの先輩の名前。


スポーツ万能、成績優秀。

眉目秀麗、品行方正。


そんな天に二物も三物も与えられたパーフェクトな人。

それが市橋先輩だ。


学年を問わず人気の市橋先輩をひと目見るため、今朝も走って校門へ。

結果は惨敗だったけど。



「うう、ひと目よ。ひと目見ることが出来れば私は今日も1日ハッピーに過ごせるのに。どうしてなの!?朝ご飯食べないで来たのにー!!」

「その身長どうにかしないと無理だな。それと最後のは寝坊したお前が悪い」


ぐっ……。

夏希の鋭い指摘に息を詰まらせる。