味方になってくれるものと思っていた友人にも見放され、パートナーとして

連れてきたはずの妹もいつしか人の輪に加わり、私のそばから離れていた。

にぎやかな場にいながら、私は焦りと孤独の両方にさいなまれることになった。

会場に入ってから目の端においていた珠貴の姿を、また追いかけた。

傍らに立つ男性と親しげに語り合い、ときおり腕につかまるようにもたれ

かかる。

彼の手が彼女の腰を支えながら歩みを促し、人々の話の輪に入っていくのを

遠くから黙って見つめた。

彼は社交的な人物のようだ。

貿易商という立場上、多くの人脈もあるのだろう。

加えて人当たりの良さが彼の持ち味といったところか。

この先、彼が珠貴に寄り添い、会社を担っていく人物になるのか。

見た限りでは、その素養は充分にあるように思われた。



オープニングセレモニーが終わると隣室へと移動となったが、そこは今期 

『榊ホテル』 が特に力を入れ改装したばかりのホールだった。

係りの者に案内されテーブルに向かうと、すでに珠貴と彼が先に座っており、

佐保さんと一緒に狩野もすました顔で同席していた。

狩野に仕組まれた席順だと思いながら他のテーブルに移るわけにもいかず、

彼らに軽く頭を下げて私たちも着席した。



「本日は、お客様の声をじかにお聞きする役目を仰せつかっております。 

みなさまの忌憚のないご意見をお聞かせいただければ幸いです」



格式ばった言い方で挨拶をした狩野は、そのあと、堅苦しいのはここまでです。

今日はさっくばらんなお話ができればと思っています。

この際ですから、苦情、苦言などありましたらそっとお知らせください、

とみなを笑わせた。



「素晴らしいホールですね。照明設備が特にいい。

燦然と輝く強い光が降り注ぐホテルの照明は、 

何もかも曝け出すようでいけません。

程よい明かりは、女性の肌も綺麗に見せるというものです」


「同感ですね。照明に気がついてくださったとは嬉しい限りです。

手を入れた甲斐がありました」



珠貴の隣りでは、彼女の連れの男性と狩野の会話が始まっていた。

狩野の企みか、珠貴の横に座らされた私はこの上ない居心地の悪さを

感じていた。