思ったよりも大掛かりな催事だった。
ホテルの新企画のお披露目でもある今夜の催しは マスコミの取材も入り
華やかな場になっていた。
招待者がメインテーブルの著名人の周りに集まる中、私の目は彼の姿を
探したが、あまりの人の多さに探し出せずにいた。
腕を組み私をエスコートしてくれている知弘さんが 「彼じゃないのか」 と
耳打ちした。
知弘さんの視線をたどると、そこに宗一郎さんが立っていた。
私を見つめる目が横にいる人へと移り、浅くではあるが丁寧な礼をして
立ち去った。
彼の横には、この前の女性が寄り添っていた。
「珠貴が思うような関係じゃないと思うよ」
「どういうこと?」
「恋人には見えないってことだよ。妹か、そうだな従姉妹ってところだろう」
「そうかしら」
「僕らを見て、彼、一礼しただろう。
彼が恋人を連れていたのなら、珠貴に合図なんてしないよ。
パートナーに誤解を招くようなこと、わざわざするとは思えないね。
それに、僕に向けられた目が厳しかった。
ふっ……あんな目を向けられたのは久しぶりだな」
何が可笑しいのか、知弘さんは口元に手をおき笑い出した。
「さぁ、行こうか。今夜は楽しい夜になりそうだ」
知弘さんは私の背中を押しながら、前へと踏み出した。