「へぇ,ピアノが?」

私に背を向けていたカケルくんがビックリした顔をしてこっちに振り返った。

私は一回ボールを床にバウンドさせる。

大きな音が体育館に響く。


「うん。」
「俺猫踏んじゃったならひけるぜ??」
「すそいじゃぁん。」
「なに棒読みしてんだよ。・・・で?」

「とりあえず,音楽が好きだったのよね。んで,ピアノいっぱいお姉ちゃんに教わってたんだけど,お姉ちゃんが東京に行っちゃって,ピアノ教室通おうか悩んでて」
「うんうん。」
「受験もあったから,とりあえずピアノはひいてなかったんだけど。」
「うんうん。」
「んで、高校入ってコーラス部の見学行ったらすごく惹かれたわけなのです。」
「へぇ。」


カケルくんは少しも目線を外さないで聞いてくれた。


「ナンカ・・・俺らって同じものが好きなんだな。」


「え?」



「『音』。というか『音楽』か。」


「オンガク・・・?」






「俺は・・・・バスケしてるときのバッシュの音とか,ボールの弾む音とか,リングに入っていく音とか,笛の音とかが好き。」


「春美は,ピアノとか,歌声とかが好き。」








「おんなじだな。」
















ドキン
















カケルくんが近づいてきた。

私の目の前に立つ。