「あ・・・あの・・・ここ,危険です。」
「・・・・・。」
「最近この辺で空き巣が出たので・・・こんなところにいたら疑われちゃいますよ?」
「・・・・・・そう。」


そうは言ったけど,その人は動く気配がない。


「あ・・・・あの??」
「捕まったら・・・・その時だよ。」
「・・・・・。」


私は上から彼を見下ろしている。
彼は会話はするけど,目線を合わせない。

顔はイケメン。少したれ目。
髪の毛は短くてとくにセットされていない。
服装はロンTにジーパン。
ズボンのポケットに手を突っ込んでただ立っていた。
年齢は・・・・同い年かそれ以上かな。。。。


私は,なんとなく離れられなくてその場に腰をおろした。




「ずっと・・・来てるんですか?ここに。」
「・・・・なんで?」
「別に・・・なんとなく聞いただけ。」
「・・・・・・。」
「『音』・・・・。聞いてるんですよね??」


「え??」


彼と目が合った。

うわ,きれいな顔。


「バッシュの音・・・聞いてるんですよね?」
「・・・・・・。」
「ずっと聞いてると『音楽』みたいですもんね。」
「・・・・・。」
「・・・心地い気がする。」
「・・・・・馬鹿に・・・しないのか?」
「え?」

彼は下を向いた。

「惨めだって・・・・思わないのか?」
「ミジメ・・・??」
「・・・・・・。」








「素敵だと思いますけど。」



素直に,そう思った。
なんでだろう。



素敵だと思ったんだ。


そういった時の彼は,なぜか悲しい顔をしているように見えた。





彼は,『またね』と言って,行ってしまった。