「これで全部かな」
部屋を見渡して陣は小さく溜息を吐く。
「もっと見たかったのだがな」
すでに片付けを済ませ、部屋を引き払った絵理が名残惜しそうにつぶやいた。
説明の前に部屋を引き払いペントハウスに来いと言われたため、荷物を片付けているところだ。
どのみち、これでは観光を続ける事など出来ないのだし、彼の意見に従うことに──
「このまま空港に行こう」
青司はぶっきらぼうに発して、ボストンバッグを肩に担いだ。
従う気など、さらさら無いらしい。
「おまえね」
「日本に帰れば問題無いだろ」
呆れる陣をちらりと見てドアに向かった。