きっとあの人はわかっていたんだと思う。
まだ小さなこの隊士が前を向けていないことを。
(なら、前を向かせてやらなきゃな)
そうさせてやれるのは自分だと、新八は一人深く頷いた。
「実はさ、隊務完了の報告を受けに来たんだ」
「…え?」
新八の言葉に鉄之助は俯かせていた顔をガバッと上げる。
何故、彼が自分の隊務のことを知っているんだろうか。
そう思っているのがありありと顔に書いてある。
わかりやすい鉄之助の反応に、つい笑いが込み上げてきてしまう新八。
「土方さんに頼まれたんだ。完了の報告聞いてきてくれって」
「副長に…?」
あぁ、と答えれば鉄之助は今にも泣き出しそうに顔を歪めた。