「・・・で、何があったの?」



 先生は、教室のドアを閉めるなり、振り返って、そう言った。





「・・・何にもありませんよ。ただ話すことがないから話さなかっただけです。」



 ・・・あくまでも何もなかったかのように振る舞う、私。



 でも、そんなの先生に通用するわけでもなく、よけいに詮索する要素を増やしてしまっただけだった。



「そんなこと言って私を誤魔化せるとでも思ってるの?」



「・・・いいえ」



 そんなことで誤魔化せないことくらいわかってた。


 ・・・ただ、





「ただ、先生に首を突っ込まれたくなかっただけです。」



 きっとこれでいいはず…


 きっとこれ以上は踏み込んでこないだろう…


 きっと、こんなに冷たい言葉をあびせたんだから『分かった。』と言って諦めてくれるだろう…





 けど、そう思っていた私に返ってきたのは、違う答えだった。