セミがうるさく鳴き、静かな風鈴の音が微かに聴こえる。


 家から一歩でも出れば汗が垂れるほどの猛暑日を迎えていた。



「・・・で、ここは因数分解をするの」






「なるほど。……解けました!」


「うん、その調子!」






 彩人くんに中学数学を教えていた。




 ~♪


 あ、電話だ。



 スマホをとり、画面を見ると『ちーちゃん』と出ていた。





「ちょっと話してくるね。」


「あ、はい。ゆっくりしてきてください。」





 部屋を出て通話をタッチし、出た。





「もしもし。どうしたの、ちーちゃん?」


『勉強会してるって~?』


「うん、まぁ…?」


『ちょっ…!?』





 あれ?


 聞こえにくいけど……



 向こうの電波が悪いのかな?





『橘に喰われないようにしろよ!』


「えっ!?林先生っ!」





 どうやら、ちーちゃんがハヤTに携帯を奪われたらしい。



 向こうでちーちゃんが『返して』とか言っているのが聞こえる。



 今は夏休み中だから、二人でお出かけでもしてるのかな?





『おうっ!橘の部屋で二人っきりなんだろう?』


「まぁ…?」





 確かに今は、彩人くんの部屋で二人っきりでテスト勉強中だけど………



 喰われるなってなに?