「橘の用事って佐藤とのことだよ。」










 それはHRが終わって図書室に行こうとしていたときのこと。



 紅月から言われた。










 やっぱり佐藤さんと………


 あ、ダメダメっ!!





 彩人くんを信じるって決めたのだから。










「だから?」


「いいの?」





 何が言いたいわけ?





「何が?」


「はぁ…小夜ちゃんは知らないようだから言っとくけど、佐藤はヤバイよ。」


「どういうこと?」


「ホント、小夜ちゃんってこういうことに疎いよね。佐藤は…」










 話によれば、あのお人形のように可愛らしい佐藤さんは、“悪女”らしい。





 なんとも、あの可愛らしいお顔を使って何人ものひとを同時に落とし、何股もしているらしい。





 でも、その人たちを彼氏とは思ってないらしく、“コレクション”と思っているらしい。



 だからみんな美形の男の子ばかりを狙っているらしい。





 つまり、彩人くんは美形だからコレクションにしようとしているわけ。










 なんか、聞いているうちにイライラしてきた!



 彩人くんはモノじゃないからっ!



 そんなひとに奪われようとしていたなんて…!










「紅月、教えてくれてありがとう!」


「はぁ、どういたしまして。小夜ちゃんが苦しむ姿を見ていたくはないからね。今ならオレにきてもいいよ?」


「それは遠慮する。彩人くん以外なんてありえないから!」


「はぁ…困ったもんだ。オレなら悲しまずに済むのに。」


「そうかもしれないけど、私が想っているひとは彩人くんしかいないから。」


 そう、もうなんと言われたって彩人くんを信じる!


 信じるしかないんだ!










「もう、お手上げ。橘には完敗だゎ。こんなに小夜ちゃんに愛されてるなんて羨ましいゎ。」


「きっと、紅月にはもっといい相手がいるよ。紅月結構いいひとだし。」





 ただそう笑って言っただけなのに、紅月の顔がほんのり赤くなった。





「それ反則っ/////・・・橘たちは体育館裏にいるから。早くいきなよ!」


「うん、ありがとう!紅月も大切なひと見つけなね!」










 紅月に今日何回目かのお礼を言い、教室をあとにした。