「退院してからの小夜さんは暗くなってしまいました。ほとんど笑わず、笑うときは作り笑いで全然楽しくなさそうでした。」


「うん。どうやって笑ったらいいのかわからなくなったの。」


「・・・辛かったですよね…」


「それは一緒でしょ?彩人くんは彩人くんで辛い思いをした、私は私で辛い思いをした。プラマイゼロじゃない!」


 そう。

 だけど、辛かったのは彩人くんの方だと思う。


 私に忘れられたんだから。





「そうですか?でも、そんな苦しんでいたボクに朗報が舞い込んできたんです。それは高一になったときでした。」


「私との見合い話?」


「はい。・・・最初は躊躇したんです。小夜さんが思い出してしまって苦しむといけないから。…でも、両親が背中を押してくれて決めたんです。今度は幸せにしよう、って。」





 私はいつの間にか泣いていた。



 私はこんなに愛されて生きてきたんだね。



 こんなにも想ってくれる人がいて、支えてくれる人がいて。。


 彩人くんはずっと一人で、たくさんのことを抱えて、一人で解決して生きてきた。


 私のことを想って、無理をして生きてきたんだ。





 さぁ、そうやって縛られている彩人くんの縄をといてあげなくちゃ!





「ねぇ、私にも彩人くんの重荷背負わせてよ…?」