私は頃合いを見計らって彩人くんに訊いた。
「彩人くん、夢のことについて教えてくれない?」
「はい。・・・全てを話します。」
それから彩人くんは、ぽつりぽつりと囁くように話した。
「その、夢に出てきた男の子はボクなんです。」
「そっか…」
やっぱり、そうだったのか…
昨日の夜、考えてたらそういう結論に辿り着いた。
「はい。実はボクたちは幼い頃は毎日のように遊んでいたんです。夢はその中の一日なんです。」
なくなってた記憶が少しずつよみがえってくるようだ。
「その日はボクたちの8歳の誕生日8月31日でした。」
「誕生日一緒だったんだね。」
「はい。その日は、小夜さんの家で小夜さんとボクの誕生会が行われる予定だったので、ボクは小夜さんの家にいたんです。」
なるほど。
だから家の庭にいたのか。
「それで、あとは夢の通り、リス公園に行って遊んでたんです。そしたら、いきなり男の人が現れて、小夜さんを拐おうとしました。」
・・・っ!?
思い出した。
でも、思い出したら震えが止まらないっ…
そんな私に気付いたのか、彩人くんは私の背中を優しく擦ってくれた。
「小夜さん、大丈夫ですよ。落ち着いて。」
「うん、ごめん。話し、続けて?」
「はい。ボクは状況反射で小夜さんを引っ張り、走って逃げました。でも、・・・ちゃんと確認すればよかった。そしたらっ…」
彩人くんは黙ってしまった。
泣いているよう。
さぁ、魔法のことば。
「大丈夫、大丈夫!」
手を握りながら言った。
「・・・すみません。」
「いいって!おあいこ、おあいこ!」
「そうですね!ボク焦り過ぎて、トラックが右側から来てるのに気付かなくて。そうしたら気付いた小夜さんは、ボクを引っ張って助けてくれたんですが、小夜さんは反動で道路に飛び出してしまって…はねられてしまったんです。」
あぁ、だから『危ない』からあとがなかったんだ。
あるはずがないんだ。