「そうと決まれば、早速行動だな。おろしてくれ」


リクは桃杏の手から離れようともがき始めた。


「リクって可愛いよねー。抱っこしてみたら気持ちいいし」


そう言うと桃杏は、リクと自分の頬をくっつけた。


驚いたリクは一瞬頬を赤らめ、またもがき始めたが、


「ふざけるな!離せ、お前…?」


抵抗を止めた。



「そう言えば、俺、お前の名前知らないな」


「あれ、言ってなかったっけ?」


「あぁ、言ってない」


「ごめんね」と桃杏はリクをおろした。
謝ったのは、リクを抱き上げたからなのか、名前を伝えてなかったからなのか。きっと後者だろう。



「私の名前は桃杏」


「桃杏って言うのか。」



リクは「桃杏桃杏…」と何度か繰り返し、この名前は絶対忘れることは無いだろうと思った。