リクは桃杏の疑問を聞いたとたんガバッと顔を上げると、
「大丈夫だ!それについては全く問題はない!」
その短い親指だけを立てようとして…、無理だったのか諦めてガッツポーズをとった。
それを見た桃杏は、苦笑した。
「問題おおありでしょ…」
「いや大丈夫、お前のマウスピースは特別だから」
「…これが?」
桃杏は握りしめて一緒にメロランドに来た、トランペット用のマウスピースを顔の前まで上げた。
これは母親の形見であって、それ以外はどこにでもあるものと変わらない。
桃杏には特別だなんてわからなかった。
「とにかく、桃杏はマウスピースの心配はしなくていい。俺を信じろ!」
ドンッと強く胸を叩いたリクは、力が強かったのか咳こんでいる。