「俺が帰した。」


煙草に火を点けながら、黒曜が口を挟んだ。


「それよりおまえ、本当に大丈夫なのか?
動悸、目眩、指先の震え…
思い当たる症状があれば言え。
俺が記憶を消してやる。」


(おぉ…? なんか優しい…)


長い指先でジッポの蓋をカチカチ鳴らす黒曜を、景時は目を丸くして眺めた。

急にどーした?
なんの心境の変化?
裏があるのか???


「ついでに紅玉の記憶も消してやる。」


黒曜は煙草をくわえたままの唇を歪めて、景時にニヤリと笑いかけた。

そーきたか。
やっぱり裏がありマシタカ。

冗談じゃねーよ。


「全力でお断りシマス!
なんの症状もアリマセン!!」


下唇を突き出した景時は、プイっと黒曜から顔を背けた。