だが薫は、景時の恨みがこもった視線にも、部屋のビミョーな空気にも全く気づかない。

いつものセリフを返すことも忘れて、少し乱れた襟元を慌てて直すうさぎを凝視していた。


「景時…
やっぱ俺、我慢できねーわ。
ごめんな。」


「…
俺に我慢させといて?」


うさぎから視線を逸らさない薫に、欲求不満爆発中の景時が恨み言を吐いた。

てか、我慢?

薫ちゃん、ナニを我慢してたの?

血潮と涙が収まってきた景時と、展開がサッパリわからず首を傾げるうさぎの前に、薫はゆっくり跪いた。

フローリングの床に手を着き、スキンヘッドを深く垂れる。


(ナニやってンの?
このコ。)


やめよーよ、そーゆーの。

薫を起こそうと、景時が急いで立ち上がる。

だが彼が歩み寄る前に、薫が口を開いた。


「お願いです、うさぎサマ。
景時を助けて下さい。」