かなりゆっくりめの朝食を終え、家族3人でのんびり過ごす。


何てこと無い日常が、これ程までに贅沢だとは思いもしなかった。


………杏花と出逢うまでは。


リビングでゴロゴロ過ごしていると、


「要、そろそろ出掛ける準備をしないと」


「…………ん」


行きたくない。


行かなければならないのは重々承知していても、


倖せを噛みしめてしまうと、人間、更に欲が出るものだ。


「要?」


「ん、分かってる」


寝転んだ状態で斗賀をお腹の上に乗せていた俺は、


渋々斗賀を杏花へ手渡し、上階の寝室へと向かった。


部屋着からスーツに着替え、


出張用の荷物の再確認を施すと、


「要、終わった?」


「ん、殆どな。ん?……斗賀は?」


「早苗さんが来たから、少しお願いして来たの」


「そうか」


杏花1人で現れた事に驚いたものの、本田が来た事に安堵した。


すると、


「ッ?!」