杏花の説明によると、


杏花の実家から送られて来た林檎で遊ばせたら、


クンクンと嗅ぎ始め、中から好みの林檎を舐め始めたらしい。


実家の老舗寿司屋で出している漬物の隠し味に林檎を使用するそうで


青森の農家と専属契約を結んでいるそうだ。


その農家は有機農法でふじ林檎を作っているらしく、


中でも無袋のサンふじ林檎は絶品だとか。


蜜も糖度も素晴らしく、生で食すのには贅沢な1品に。


そんな極上林檎をお裾分けして貰い、


離乳食に使用しているそうだ。


赤ちゃんには生まれる前から5感が働いていて、


嗅覚はその中でも特に発達しているそうだ。


しかも、杏花は『利き蜜柑』が出来ていたらしい。


嘘のような本当の話。


プロの料理人の父の血を受け継いだ杏花。


そして、サラブレッドの如く、その血を受け継いでいる斗賀。


もしかすると、いや、必ずと言っていいほど


斗賀は舌の肥えた奴になるだろうな。


自分と似た性質を持つ斗賀が可愛くて仕方ない様子。


杏花の表情はとても倖せに満ち溢れている。




俺がいなくても、杏花は倖せを感じる事が出来る。


それがちょっと寂しく感じた。